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『風の色、雲の音、水の匂い、…形にしたいものがたくさんある』
向井勝實/彫刻家
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高さ7、8メートルもある大きくて力強い作品から、細く小さい揺れ動く人にも似た作品まで、向井勝實さんは常に自然、そして人間と、真正面から向き合っている彫刻家です。那須に暮らし、創作活動を続ける向井さんを訪ねました。
「今年1月、黒磯の板室温泉病院に作品が出来上がったんだけど、作ってる所に入院患者さんや看護師さんがやって来て随分参加してくれた。車椅子のおじいさんも毎日やって来たよ。ノミがしっかり持てないから一緒に持ってあげるんだけど、ちゃんと彫ってくれてね。道具を使って何かをしたいという欲求は、誰の中にもあるんだ。それは縄文の頃から変わらない。器用不器用とか関係なく、やりたいんだよね。そりゃあ自分一人でやった方が仕事ははかどるけど、それが目的じゃないから。参加してくれた人の記憶に残るし、僕はたくさんの人とワイワイやるのが楽しい」
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「いろんなところの学校にも出前講座をします。僕がまずチェーンソーでおおまかな形を作って、そのあと子供たちがノミで彫っていく。よく先生から子供がノミを使って大丈夫かと聞かれるけど、僕は、よーく研いであるから大丈夫だよと答える。スパスパ切れるから。切れないノミだと怪我するんです。子供っていうのは、切れるノミ、刃物を使ってるとふざけたりしませんよ。長年やっているけど、怪我は1件もない。
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こういう時、先生も初めてノミを握るという人が多い。だから、先生も生徒も一緒から始める。子供の方がすぐ上手くなるから『先生、へたくそ』なんて言われてる。子供は恐いもの知らずだけど、中には刃物を持たされて固まっちゃう子もいるよ。刃物は切れるということは、いつか体験しなくちゃいけないことなの。こういう経験って、とてもいいと思いますよ。
子供たちと一緒に樹齢何百年という木を彫りながら、木も人も、遥か向こうから命がやって来てるという話をします。自分の命の事を考えてもらいたいから」
「僕の作品のモチーフは自然の現象です。風の色や雲の音、水の匂い、雪の音、…そういうものを形にしたいといつも思っている。そんな目線で自然とつき合ってると、山菜採りも水遊びもけっこうネタが多い。たとえばカジカ捕りに水に潜ったら、こうやってカジカを捕ろうとしていることそのものを形にしようと思う。
子供たちにもよく宿題を出すんです。何かを好きだ好きだと思うそのことを形にしたらどうなるか、ってね。ちゃんと何かの形が出てきますよ。そしてそれは自分だけの形、オリジナル。オリジナルでないものはどこにも通用しない。そういう形が出てくるから、面白いんですよ」
板室温泉病院のほか、塩原もみじ谷大吊り橋の対岸公園でも向井さんの作品に出会えます。どこかで木を彫っている向井さんを見つけたら「やらせて」って声を掛けてみてください。
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※このインタビュー記事は、2004年4月5日発行の「那須野をむすぶコミュニケーションペーパーひなた」に掲載されたものです。
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